人間力コラム

挨拶にも人間力が問われる    09. 7. 7

「ありがとうございました」
「失礼いたします」
「申し訳ございません」

 ある企業の新人研修を行わせていただいた際、毎日朝礼として当番の方が前に出て、挨拶をすると全員が後を追って繰り返すという、挨拶のトレーニングを行っていた。
その後を受けて私の講座が開始となったのだが、数ヶ月もこうしたトレーニングを行っているせいか、挨拶をするときの反応は非常によい。
研修に限らず一般企業でも、朝礼の一部としてこうした挨拶の連呼を接客トレーニングの一環として実施しているところは多い。
しかし、私はこうした対人トレーニングを条件反射のように体に覚えさせることには、やや違和感を覚える。
先日、あるレジャー・外食チェーンを運営する会社の教育責任者と食事をする機会があった。彼の店はこの不況の中、どの店に行っても満席で常にお客様が入り口付近に列を成している。
その理由はいろいろとあるようなのだが、教育トレーニングにもその一端を感じられた。
やはり挨拶を連呼するトレーニングも行っているとのことだったが、その方法がユニークだった。

「申し訳ございません」
この言葉を発する前に、イメージをさせる。
熱い料理を家族で食事をしているテーブルに配膳しようとしたときに、子供が不意に振り返り、それを避けるためにお皿を引き上げたとたん皿から熱いスープが隣の子供の首筋から背中に渡ってかかってしまった。
子供は泣き叫び、母親は狼狽している。そういう状況であなたはどのように「申し訳ございません」と言うでしょう。と、その状況をリアルに想像させるそうだ。
するとほとんどのスタッフは顔つきがこわばり、絞り出すような声で「申し訳ございません」と言うようになると。
ところが、中には表情も変わらず謝罪する者もいるそうで、そうしたスタッフはやはり現場に配属後も、サービスマインドが低いそうだ。
挨拶ひとつでも、相手の気持ちになりきる人間力が必要とされる。